剖検担当部署の一覧カレンダーを更新致しました。
剖検を希望される先生は、必ず以下のリンク先のページをお読みになってから、御案内に沿ってお申し込み下さい。
御協力を宜しくお願い致します。
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令和6年度 第4回教育型CPCが当院で開催されました。
CPCとは、亡くなった患者さんの死因を明らかにするために臨床医と病理医がそれぞれの観点から考察を行い、議論するカンファレンスのことです。
この度は初期研修医の皆さんが発表を行う教育型CPCで、当部ではなく、免疫病理学講座の長門先生が、病理医側の発表を行う研修医さん達のサポートをしました。
今回のCPCで取り扱われた症例は、患者さんがもともと持っていた糖尿病、高血圧、脂質異常症などの、俗にいう生活習慣病が、本体の病気の存在を隠して発見が遅れてしまったものでした。
どういうことかと言うと、例えるならば、もともと糖尿病と診断されている人が、新しくかかったある病気のせいで血糖が異常に高くなっても糖尿病のせいと考えられてしまい、詳しく原因を調べられなかった、みたいな感じです。
生活習慣病は、それ自体が命を奪うことも、更に他の病気を間接的に引き起こしてしまうことも、今回のように他の病気の存在を隠してしまうこともある、とても恐ろしい病気なのですが、一番怖いのが、医療に関心がない人にはその恐ろしさが全く伝わらないことだと思います。
今回の症例は結果的に珍しいタイプの癌が本体だったので、研修医の先生方の勉強になると判断されて用意させていただきました。
勿論、珍しい病気の診療ができるのも医師としての実力ですが、ありふれた病気をかかえるたくさんの患者さん達を適切に治療して、適切に経過を見ることができるのも医師として必要な実力です。
そういう意味では、人口密集国である日本の医療は、ありふれた病気の患者さんを、一人で何百人も診ている開業医の先生方で支えられているといっても過言じゃないと思います。
研修医の皆さんにはこの度の症例を通して、一般的な病気の日常診療の大切さも学び、この経験をこれからの日本の医療に活かしていただけたらと思います。
当院泌尿器科との合同カンファレンスにて、当部の上小倉先生、林先生が症例提示を行いました。
今回取り上げられた症例の中に、癌の発生場所や広がり方が問題になった症例がありました。
女性の方はピンとこないかもしれませんが、男性には尿を溜める膀胱という臓器、そしてそのすぐ下に前立腺という臓器が存在します。
キッチングッズにもある、瓶などに液体を注ぐ時に便利な「漏斗」という道具がありますが、その三角形の部分を「膀胱」、細い管の部分を尿の通り道の「尿道」だと思って下さい。
「前立腺」は、その漏斗の三角形から細い管の変わり目の部分を、ドーナツのように密着して取り巻いている臓器です。
その辺りにできた癌が問題となったのですが、何が問題なのかというと、
①漏斗の三角形の部分の内側に最初にできた癌が、ドーナツが取り巻いている管のところまで這うように広がって、そのドーナツの部分の癌が深くまで進んで管の外側にあるドーナツ本体まで入り込んだ場合
②ドーナツが取り巻いている管の内側に最初にできた癌が、そのまま深くまで進んで、管の外側にあるドーナツ本体まで入り込んだ場合
③漏斗の三角形の部分の内側に最初にできた癌が、その場で深くまで進んで、三角形の部分の外側と接しているドーナツの部分に直接入り込んだ場合
以上3つの場合を考慮しなければならず、しかもそれぞれの場合で癌の評価のしかたが変わってしまうので、非常にややこしい症例だったのです。
癌の取り扱い規約でも詳細な注釈が載っているほどにややこしいのです。
私自身、この文章を書いていてとても分かり辛いと実感していますが、基本的に病理診断レポートは文字だけで結果を伝えなくてはいけません。
生成AIによって何でも仕事の効率化が流行っていますが、AIは頭が良過ぎて、「ある物事を分からない人間が、何故それが分からないのか」を理解することが苦手です。
結果的に人々のコミュニケーションが言葉に依存している内は、まだまだ「分からないが分かる」人間の需要はなくならないのではないかと期待しています。
なんか、分かり辛いですね。
当院キャンサーボードにて、当部の湯澤先生が症例提示を行いました。
キャンサーボードとは、旭川医科大学病院での悪性腫瘍:がんの症例に対して、各科の医師が集まって意見を出し合う大型カンファレンスのことで、当院では定期的に開催されております。
当部の湯澤先生は、乳房にできた葉状腫瘍という珍しい悪性腫瘍の症例を診断し、その解説をしました。
上に掲載している写真は、葉状腫瘍の特徴的な病理組織像です。
初めて御覧になった方は、Y字型の隙間になっているところに目がいくと思います。
実際の腫瘍の部分は、その周りです。
周りの組織の細胞が増殖していることにより、本来の乳房の管状の構造物が押しやられてひしゃげた形になっているのです。
頭の体操などで似たようなクイズを見たことがありますが、一つの着眼点に縛られていると、見えてこないものが世の中には意外とあるのです。
医療に限らず広い分野で、広い視点や広い知識、広い心で人々が互いを理解し、広い交友関係を良好に築いていければ、広い意味での平和が、この狭い世界にも広まるはずです。
当院婦人科との合同カンファレンスにて、当部の湯澤先生、上小倉先生が症例提示を行いました。
今回取り上げられた症例の中に、子宮筋腫が血管の中に入り込んでいるものがありました。
子宮筋腫は比較的有名な病気で、医療関係者ではない方でも耳にされたことがあると思います。
女性器である子宮に筋肉の塊ができあがって、腹痛や出血などの症状を引き起こすもので、手術で身体から取り出す治療法がよく用いられます。
基本的には良性の腫瘍で、癌のように命に関わることは殆どありません。
ですが中には、「良性ではない子宮筋腫」もあり、例えば今回のように血管に入り込んだものは血液に乗って遠くまで運ばれ、肺の血管を詰まらせて呼吸困難を引き起こすこともあります。
なので我々病理医は、臨床医の先生が良性の病気と診断した標本でも、本当に良性なのか、少しでも悪性が疑われる所見はないのか、注意深く診ながら診断しています。
実は、「悪いものを見つける」より「悪いものはない」と言い切る方が難しかったりします。
昨今は特に、医療者が責任問題を追求されることが増えてきたため、ことさら慎重になる必要があります。
言わば「悪魔の証明」というもので、完全な証明は人間には不可能です。
「ゴッドハンド」や「オペ室の悪魔」などと形容される天才医師もいらっしゃるようですが、結局、ひとを診るのはひと、なのだとつくづく思います。
当部の湯澤先生が共著したcase reportの「Tongue squamous cell carcinoma masked by herpes simplex virus infection: A case report」がOncology Letters (IF=2.5) にアクセプトされました。
ヒト単純ヘルペスウイルス感染が、舌癌の存在を隠してしまった患者さんの症例報告です。
「ヘルペス」という言葉、医療関係者でなくても聞いたことがあるほど有名だと思います。
実はヘルペスウイルスは人に感染するものだけで8種類あり、それぞれ引き起こす病気が異なります。
性行為で感染するヘルペスウイルスも確かに存在するので、そのイメージだけが先行して「ヘルペス=性感染症」という誤った認識を持っている方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、お子様が突然熱を出し、肌にピンクのぶつぶつができて御両親がびっくりする「突発性発疹」も、ヘルペスウイルスの中の一種が原因です。
勿論、性行為は全く関係ありません。
SNSなどにおける若者の文章の理解力の低下がよく取りざたされますが、別に若くなくとも「ヘルペス=性感染症」と認識していて、早とちりで患者さんを攻撃する人達はかなりいます。
昔に比べて調べものをする上で便利なAIは増えてきているのに、調べものをしようとする人間が減ってきているのは、なんとも皮肉なものです。
【2025年2月7日更新】
当院における病理標本のSOP(標準作業手順書)の改訂に伴い、未染標本作製依頼書の新しい様式を当ホームページ上にアップロード致しました。
御依頼の際は、本日よりこちらを御利用いただきたく存じます。
書類作成前に、臨床用1のExcelファイルはver16、臨床用2はver5、研究用はver5であることを御確認下さい。
下記当ホームページ内URLのリンク先のページからダウンロードをお願い致します。
当部の谷野先生と林先生が当院の2024年度第4回MDDで症例提示をしました。
MDDとはMulti-Disciplinary Discussionの略で、呼吸器専門医、放射線科医、病理医の3者で合議をする、「日本呼吸器学会 びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン」で推奨されている診断法で、当院では定期的に開催されています。
今回取り上げられた症例の中に、間質性肺炎と診断する上で、背景肺組織との比較が困難だったものがありました。
例えば、肺癌の周りにある肺の組織は、癌から何らかの影響を受けています。
炎症細胞が集まってきていたり、線維のように固くなっていたりと、色々とあります。
では、癌の周りの肺組織が炎症と線維化を起こしていたら、それは間質性肺炎なのかというとそうではなく、その炎症と線維化が癌の影響でないことを証明する必要があります。
そこで必要となるのが「背景肺組織」で、癌と離れたところの肺にも炎症や線維化が見られたら、間質性肺炎が元々あった可能性を考えることができます。
つまりは病気を考える上での「背景の情報」となる肺の組織のことですね。
病理医は画像1枚で診断できる病気ばかり診る訳ではないので、必ず背景組織との比較が必要になります。
よく「最近はうつ病などのこころの病気の患者さんが急増している」と言われますが、必ずしも「現代社会が昔より生き辛くなっているから」だけでなく、「診断基準が変わって病気に当てはまる患者さんが増えた」影響もあるのです。
物事を正しく判断する上で、背景の情報を加味することは、とても重要です。
「病理医は何時間も顕微鏡を眺めなくてはならない過酷でブラックな仕事だ」と先入観がある方は、是非当ホームページを御覧になって、背景まで含めて御判断下さい。
当部の谷野先生と湯澤先生が共著したcase reportの「Meningitis due to inflammatory reaction to Echinococcus antigen after the resection of cerebral alveolar hydatid cyst」がJournal of Surgical Case Reports (IF=0.4) にアクセプトされました。
エキノコックスという微生物に対する炎症反応により引き起こされた髄膜炎についての症例報告です。
以前の記事でも触れましたが、エキノコックスにより引き起こされるエキノコックス症は非常に恐ろしい、時には命に関わる感染症で、主にキタキツネの糞便を介して感染が広まります。
当部のある旭川市は北海道にあるので、キタキツネが割と身近にいます。
時々、住宅街でも見かけるほどです。
それ故、「キツネを見かけても絶対に近寄らないように。触ってしまったら必ず手をよく洗うように」と警告の看板が立てられているのもよく見ます。
道外や外国からいらっしゃった方々は、キタキツネのその愛くるしい見た目に思わず触りたくなってしまうとは思いますが、本当に危険なのでおやめ下さい。
多少オーバーな表現かもしれませんが、オーバーなツーリズムがオーバーするまではジャストだと思います。