当院婦人科との合同カンファレンスにて、当部の湯澤先生、上小倉先生が症例提示を行いました。
今回取り上げられた症例の中に、子宮筋腫が血管の中に入り込んでいるものがありました。
子宮筋腫は比較的有名な病気で、医療関係者ではない方でも耳にされたことがあると思います。
女性器である子宮に筋肉の塊ができあがって、腹痛や出血などの症状を引き起こすもので、手術で身体から取り出す治療法がよく用いられます。
基本的には良性の腫瘍で、癌のように命に関わることは殆どありません。
ですが中には、「良性ではない子宮筋腫」もあり、例えば今回のように血管に入り込んだものは血液に乗って遠くまで運ばれ、肺の血管を詰まらせて呼吸困難を引き起こすこともあります。
なので我々病理医は、臨床医の先生が良性の病気と診断した標本でも、本当に良性なのか、少しでも悪性が疑われる所見はないのか、注意深く診ながら診断しています。
実は、「悪いものを見つける」より「悪いものはない」と言い切る方が難しかったりします。
昨今は特に、医療者が責任問題を追求されることが増えてきたため、ことさら慎重になる必要があります。
言わば「悪魔の証明」というもので、完全な証明は人間には不可能です。
「ゴッドハンド」や「オペ室の悪魔」などと形容される天才医師もいらっしゃるようですが、結局、ひとを診るのはひと、なのだとつくづく思います。