第5回日本石綿・中皮腫学会学術集会が岡山県で開催され、札幌厚生病院初期研修中の秋田谷先生が演題発表を行い、谷野先生が座長を務めました。

第5回日本石綿・中皮腫学会学術集会が岡山県で開催され、札幌厚生病院初期研修中の秋田谷先生が演題発表を行い、谷野先生が座長を務めました。

秋田谷先生は当大学出身で、「腹膜中皮腫における核グレードおよび組織学的グレードの有用性の多施設的検討」という演題で発表をしました。

「石綿」とは「アスベスト」の和名で、こちらの方が聞き覚えのある方が多いと思います。

約20年前に日本でも大問題になった、呼吸器障害を引き起こす建築材のことです。

2000年代前半は他にもSARSや鳥インフルエンザなど呼吸器疾患に関連する病気が度々取り沙汰され、流行語大賞にもノミネートされました。

アスベストが話題になった当時はまだ小学校に入学前だった秋田谷先生が、こうして医師として学会でアスベストに関する発表をする事実に、流れ行く時を感じます。

令和6年度 第2回教育型CPCが当院で開催され、当部の林先生が症例発表の指導医として参加しました。

令和6年度 第2回教育型CPCが当院で開催され、当部の林先生が症例発表の指導医として参加しました。

CPCとは、亡くなった患者さんの死因を明らかにするために臨床医と病理医がそれぞれの観点から考察を行い、議論するカンファレンスのことです。

この度は初期研修医の皆さんが発表を行う教育型CPCで、林先生は病理医側の発表を行う研修医さん達のサポートをしました。

今回のCPCは、胃にできた腫瘍が全身の臓器に転移して、多臓器不全を起こして亡くなった患者さんの症例でした。

多臓器転移・多臓器不全ということもあって、全身の臓器の病理組織を診なくてはならず、研修医の皆さんは見慣れない顕微鏡越しの世界に苦労したことと思います。

本当にお疲れ様でした。

何週間も前から頑張って準備して、結果的にカンファレンス自体は1時間弱の長さでしたが、終わってみたらあっという間に感じたかもしれません。

ですが、患者さんを失った御家族の悲しみはこの先もずっと続きます。

その悲しみに寄り添えるように、我々病理医は、全力で患者様を診て、死因を診断します。

どんなに初期研修医の研修内容が時代と共に変わっても、例えコロナ禍を経ても、CPCはずっと続けられてきました。

診療ガイドラインの詳しい内容とかは忘れても、

その意味だけは忘れないで下さい。

※掲載写真は一部加工してあります。

当部の湯澤先生が「肺癌遺伝子検査呼吸器連携カンファレンス in 北海道」で講演を行いました。

当部の湯澤先生が「肺癌遺伝子検査呼吸器連携カンファレンス in 北海道」で講演を行いました。

タイトル通り、肺癌の遺伝子検査について多領域の見解を交えて議論する、公開カンファレンスです。

湯澤先生は病理医代表として参加し、病理学的な遺伝子検査について、「非小細胞肺癌の適切な遺伝子検査とは~マルチプレックス検査での検出率向上に向けて~」という演題で講演しました。

「癌家系」という言葉がありますが、「癌を引き起こし易い」や「癌を抑える力が低い」などの遺伝子の特徴は受け継がれることがあります。

遥か昔から得体の知れない病気として、代々受け継がれてきたものも中にはあるのかもしれません。

ですが、時代が進むに連れ、医学は進化していきました。

検査によって癌遺伝子の正体や弱点が分かっていき、それに照準を合わせた治療法も編み出されていきました。

病魔と人間の戦いは夢幻に続くのかもしれませんが、癌に立ち向かおうとするこの技術と意思は、これからも幾星霜とつないでいってほしいと思います。

当部の湯澤先生が共著したcase reportの「A case of masquerade syndrome caused by metastatic iris tumor diagnosed by a high CEA level in the aqueous humor and iris biopsy」がDiagnostic Pathology (IF 2.4) にアクセプトされました。

当部の湯澤先生が共著したcase reportの「A case of masquerade syndrome caused by metastatic iris tumor diagnosed by a high CEA level in the aqueous humor and iris biopsy」がDiagnostic Pathology (IF 2.4) にアクセプトされました。

「masquerade syndrome(マスカレード・シンドローム)」とは、日本語に訳すと「仮面症候群」といい、本来の病気の症状や身体・検査所見が他の病気と似ている場合に用いられる言葉で、「本当の病気が仮面の下に隠されてしまう」という意味が込められています。

湯澤先生が執筆したこの論文のように、特に眼の病気においては、「目のかすみや視力低下の原因がぶどう膜炎だと思われていたが、実は悪性腫瘍だった」というケースによく使われるようです。

比喩を用いた洒落たネーミングかもしれませんが、「マスカレード(仮面)」という言葉や文化が根付いていない日本人にはちょっとイメージが湧きにくい言葉だと私は思います。

恐らくこちらを読んで下さっている方々の殆どが、「ホテル」を思い浮かべたのではないでしょうか。

感性は国によって違いが出てしまいますが、病気自体の正体や治療法は国で変わらないので、どの国の医療従事者も同じビジョンで診療できたら、「ちょっと待ってよ」と焦る機会も少なくなると東の島国のいち病理医は思います。

当部の谷野先生が共著したcase reportの「Fulminant Streptococcus suis Infection Causing Myocardial Damage and Toxic Shock-Like Syndrome: A Case Report」がCureus (IF: 1.2) にアクセプトされました。

当部の谷野先生が共著したcase reportの「Fulminant Streptococcus suis Infection Causing Myocardial Damage and Toxic Shock-Like Syndrome: A Case Report」がCureus (IF: 1.2) にアクセプトされました。

Cureusとは、論文掲載料が無料で、論文の採用率も高いという新しい形で注目されている英語の電子ジャーナルです。

生成AIの発達により医学論文執筆の敷居が高くなくなっている時代なので、これからこのような窓口の広い発表媒体の需要が高くなっていく時代でもあります。

物事を成し遂げるには避けては通れない壁も高くなくなっている時代ですが、便利さに甘えずに医療従事者の志は常に高くなっていく時代にしたいですね。

【2024年9月9日更新】剖検担当部署の一覧カレンダーを更新致しました。

剖検担当部署の一覧カレンダーを更新致しました。

2024年9月6日にアップロードしたものに訂正があり、再度新しくアップロードさせていただきました。

剖検のご依頼の際はこちらのカレンダーをご確認の上、各部署にご連絡をお願い致します。

剖検のご依頼 – 旭川医科大学病院 病理部 【公式】 (asahikawa-patho.net)

当院婦人科病理カンファレンスにて、当部の湯澤先生、上小倉先生が症例提示を行いました。

当院婦人科病理カンファレンスにて、当部の湯澤先生、上小倉先生が症例提示を行いました。

今回取り上げられた症例の中に、女性器の内腔側に子どもの握りこぶしほどの大きさの腫瘍ができた患者さんがいらっしゃいました。

実際に病理組織で評価すると、癌は女性器自体に深く根付いていなかったため、見た目ほど悪性度は高くないという診断に至りました。

私もそうだったのですが、医学生の方々の中にも、大きくて見た目が派手なものより、臓器にへばりつくように平べったい癌の方が悪性度が高いという事実に、なかなかピンとこない方はいらっしゃるのではないでしょうか。

一概には言えないのですが、癌は臓器に染み込むように増殖していく方が、身体中に広がり易くて悪いものなのです。

実際に病理組織で比較して見た方がイメージが湧き易いと思います。

結局、人間の身体を理解するには大きい視点のマクロと小さいミクロの比較が大事なのですが、医学生の人数分顕微鏡を用意できないので、病理や組織学の勉強はおろそかになりがちです。

森ばかり見ていたら、森がどんどん枯れていっても理由は分かりません。

一本のミズナラの木を見て異変に気付くことができれば、森全体のナラ枯れは防げるのです。

第14回迅速免疫染色研究会が本学にて開催され、当部の谷野先生が代表世話人を務め、林先生、宮川臨床検査技師が演題を発表しました。

第14回迅速免疫染色研究会が本学にて開催され、当部の谷野先生が代表世話人を務め、林先生、宮川臨床検査技師が演題を発表しました。

コロナ禍を経て久しぶりの対面開催となった当学会は、文字通り、術中迅速病理診断における免疫染色についての研究成果を発表する場です。

免疫染色とは、細胞の免疫抗体反応を利用した特別な試薬で標本を染色することで、細胞についてより詳細な情報が得られる検査法です。

本来の免疫染色はできあがりまでに数時間から数日かかることもあるのですが、迅速免疫染色は、それを手術の真っ最中の迅速病理診断で用いるというとても画期的な概念なのです。

簡単に言うと、手術で切除したものが悪性腫瘍かどうかの判断がとても分かり易くなるのです。

林先生と宮川臨床検査技師は、当院の迅速免疫染色における実際の症例や経験を踏まえた研究・調査結果をそれぞれ発表し、会場では活発な議論が行われました。

 

迅速免疫染色の概念の誕生から既に10年以上が経過し、術中迅速病理診断自体は更にさかのぼります。

その長い歴史は全て、手術の中のたった一時のために蓄積されてきました。

ですが、その一時の判断が、患者さんの長い長い人生を左右することになり得るのです。

非常に「タイパ」は悪いのかもしれませんが、医療の歴史は悪いタイパの積み重ねで発展してきました。

今この瞬間も、たった一時のために、医師、検査技師、製薬会社、医療機器メーカーなど、たくさんの方々が何十年もかけてこの技術を磨いて下さっています。

タイパで人は、救えないからです。

※掲載写真は一部修正しております。

神戸大学医学部付属病院 病理診断科の伊藤智雄教授に「病理診断とAI」「原発不明癌の診断」という2つのテーマで御講演いただきました。

神戸大学医学部付属病院 病理診断科の伊藤智雄教授に「病理診断とAI」「原発不明癌の診断」という2つのテーマで御講演いただきました。

プログラミングに関しては御専門ではない伊藤教授が、御自身で勉強されて、AIの病理診断アルゴリズムの作成に挑戦した実際の過程を分かり易く教えて下さり、リアリティーのあるとても興味深い御講演でした。

 

調べてみたところ、AI技術の発展が世界的に目覚ましい昨今ですが、意外にもモノづくりに長けた日本の、病理診断分野においてはまだまだ遅れているようです。

AIの実際の病理画像の読み込みに制約がある、最終的な確定診断にAIが踏み込める領域が狭いなど、日本ならではの事情が関わっているとのことです。

日本は、AI技術においては世界におくれをとっている、と専門家の方々には嘆かわしい現状でもあるみたいです。

逆に言えば法的な調整次第で、日本のAI医療はまだまだのびしろがあるということでもあり、今後の発展に期待が膨らみます。

 

 

 

 

私はAI技術の知識や病理診断の能力もまだまだ未熟ないち病理医ですが、嘆かわしいほど慎重で奥ゆかしい日本人の倫理観が大好きです。

世界からおくれていても、自分なりに一生懸命だったら、

 

一等賞だと、私は思います。