当部の谷野先生と林先生が当院の2024年度第4回MDDで症例提示をしました。
MDDとはMulti-Disciplinary Discussionの略で、呼吸器専門医、放射線科医、病理医の3者で合議をする、「日本呼吸器学会 びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン」で推奨されている診断法で、当院では定期的に開催されています。
今回取り上げられた症例の中に、間質性肺炎と診断する上で、背景肺組織との比較が困難だったものがありました。
例えば、肺癌の周りにある肺の組織は、癌から何らかの影響を受けています。
炎症細胞が集まってきていたり、線維のように固くなっていたりと、色々とあります。
では、癌の周りの肺組織が炎症と線維化を起こしていたら、それは間質性肺炎なのかというとそうではなく、その炎症と線維化が癌の影響でないことを証明する必要があります。
そこで必要となるのが「背景肺組織」で、癌と離れたところの肺にも炎症や線維化が見られたら、間質性肺炎が元々あった可能性を考えることができます。
つまりは病気を考える上での「背景の情報」となる肺の組織のことですね。
病理医は画像1枚で診断できる病気ばかり診る訳ではないので、必ず背景組織との比較が必要になります。
よく「最近はうつ病などのこころの病気の患者さんが急増している」と言われますが、必ずしも「現代社会が昔より生き辛くなっているから」だけでなく、「診断基準が変わって病気に当てはまる患者さんが増えた」影響もあるのです。
物事を正しく判断する上で、背景の情報を加味することは、とても重要です。
「病理医は何時間も顕微鏡を眺めなくてはならない過酷でブラックな仕事だ」と先入観がある方は、是非当ホームページを御覧になって、背景まで含めて御判断下さい。