お知らせ

当院婦人科との合同カンファレンスにて、当部の湯澤先生、上小倉先生が症例提示を行いました。

当院婦人科との合同カンファレンスにて、当部の湯澤先生、上小倉先生が症例提示を行いました。

今回取り上げられた症例の中に、子宮筋腫が血管の中に入り込んでいるものがありました。

子宮筋腫は比較的有名な病気で、医療関係者ではない方でも耳にされたことがあると思います。

女性器である子宮に筋肉の塊ができあがって、腹痛や出血などの症状を引き起こすもので、手術で身体から取り出す治療法がよく用いられます。

基本的には良性の腫瘍で、癌のように命に関わることは殆どありません。

ですが中には、「良性ではない子宮筋腫」もあり、例えば今回のように血管に入り込んだものは血液に乗って遠くまで運ばれ、肺の血管を詰まらせて呼吸困難を引き起こすこともあります。

なので我々病理医は、臨床医の先生が良性の病気と診断した標本でも、本当に良性なのか、少しでも悪性が疑われる所見はないのか、注意深く診ながら診断しています。

実は、「悪いものを見つける」より「悪いものはない」と言い切る方が難しかったりします。

昨今は特に、医療者が責任問題を追求されることが増えてきたため、ことさら慎重になる必要があります。

言わば「悪魔の証明」というもので、完全な証明は人間には不可能です。

「ゴッドハンド」や「オペ室の悪魔」などと形容される天才医師もいらっしゃるようですが、結局、ひとを診るのはひと、なのだとつくづく思います。

当部の湯澤先生が共著したcase reportの「Tongue squamous cell carcinoma masked by herpes simplex virus infection: A case report」がOncology Letters (IF=2.5) にアクセプトされました。

当部の湯澤先生が共著したcase reportの「Tongue squamous cell carcinoma masked by herpes simplex virus infection: A case report」がOncology Letters (IF=2.5) にアクセプトされました。

ヒト単純ヘルペスウイルス感染が、舌癌の存在を隠してしまった患者さんの症例報告です。

「ヘルペス」という言葉、医療関係者でなくても聞いたことがあるほど有名だと思います。

実はヘルペスウイルスは人に感染するものだけで8種類あり、それぞれ引き起こす病気が異なります。

性行為で感染するヘルペスウイルスも確かに存在するので、そのイメージだけが先行して「ヘルペス=性感染症」という誤った認識を持っている方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、お子様が突然熱を出し、肌にピンクのぶつぶつができて御両親がびっくりする「突発性発疹」も、ヘルペスウイルスの中の一種が原因です。

勿論、性行為は全く関係ありません。

SNSなどにおける若者の文章の理解力の低下がよく取りざたされますが、別に若くなくとも「ヘルペス=性感染症」と認識していて、早とちりで患者さんを攻撃する人達はかなりいます。

昔に比べて調べものをする上で便利なAIは増えてきているのに、調べものをしようとする人間が減ってきているのは、なんとも皮肉なものです。

【重要・2025年2月7日更新】 当院における病理標本のSOP(標準作業手順書)の改訂に伴い、未染標本作製依頼書の新しい様式を当ホームページ上にアップロード致しました。

【2025年2月7日更新】

当院における病理標本のSOP(標準作業手順書)の改訂に伴い、未染標本作製依頼書の新しい様式を当ホームページ上にアップロード致しました。

御依頼の際は、本日よりこちらを御利用いただきたく存じます。

書類作成前に、臨床用1のExcelファイルはver16、臨床用2はver5、研究用はver5であることを御確認下さい。

下記当ホームページ内URLのリンク先のページからダウンロードをお願い致します。

未染標本作製依頼 – 旭川医科大学病院 病理部 【公式】 (asahikawa-patho.net)

当部の谷野先生と林先生が当院の2024年度第4回MDDで症例提示をしました。

当部の谷野先生と林先生が当院の2024年度第4回MDDで症例提示をしました。

MDDとはMulti-Disciplinary Discussionの略で、呼吸器専門医、放射線科医、病理医の3者で合議をする、「日本呼吸器学会 びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン」で推奨されている診断法で、当院では定期的に開催されています。

今回取り上げられた症例の中に、間質性肺炎と診断する上で、背景肺組織との比較が困難だったものがありました。

例えば、肺癌の周りにある肺の組織は、癌から何らかの影響を受けています。

炎症細胞が集まってきていたり、線維のように固くなっていたりと、色々とあります。

では、癌の周りの肺組織が炎症と線維化を起こしていたら、それは間質性肺炎なのかというとそうではなく、その炎症と線維化が癌の影響でないことを証明する必要があります。

そこで必要となるのが「背景肺組織」で、癌と離れたところの肺にも炎症や線維化が見られたら、間質性肺炎が元々あった可能性を考えることができます。

つまりは病気を考える上での「背景の情報」となる肺の組織のことですね。

病理医は画像1枚で診断できる病気ばかり診る訳ではないので、必ず背景組織との比較が必要になります。

よく「最近はうつ病などのこころの病気の患者さんが急増している」と言われますが、必ずしも「現代社会が昔より生き辛くなっているから」だけでなく、「診断基準が変わって病気に当てはまる患者さんが増えた」影響もあるのです。

物事を正しく判断する上で、背景の情報を加味することは、とても重要です。

「病理医は何時間も顕微鏡を眺めなくてはならない過酷でブラックな仕事だ」と先入観がある方は、是非当ホームページを御覧になって、背景まで含めて御判断下さい。

当部の谷野先生と湯澤先生が共著したcase reportの「Meningitis due to inflammatory reaction to Echinococcus antigen after the resection of cerebral alveolar hydatid cyst」がJournal of Surgical Case Reports (IF=0.4) にアクセプトされました。

当部の谷野先生と湯澤先生が共著したcase reportの「Meningitis due to inflammatory reaction to Echinococcus antigen after the resection of cerebral alveolar hydatid cyst」がJournal of Surgical Case Reports (IF=0.4) にアクセプトされました。

エキノコックスという微生物に対する炎症反応により引き起こされた髄膜炎についての症例報告です。

以前の記事でも触れましたが、エキノコックスにより引き起こされるエキノコックス症は非常に恐ろしい、時には命に関わる感染症で、主にキタキツネの糞便を介して感染が広まります。

当部のある旭川市は北海道にあるので、キタキツネが割と身近にいます。

時々、住宅街でも見かけるほどです。

それ故、「キツネを見かけても絶対に近寄らないように。触ってしまったら必ず手をよく洗うように」と警告の看板が立てられているのもよく見ます。

道外や外国からいらっしゃった方々は、キタキツネのその愛くるしい見た目に思わず触りたくなってしまうとは思いますが、本当に危険なのでおやめ下さい。

多少オーバーな表現かもしれませんが、オーバーなツーリズムがオーバーするまではジャストだと思います。

当院キャンサーボードにて、当部の上小倉先生が症例提示を行いました。

当院キャンサーボードにて、当部の上小倉先生が症例提示を行いました。

キャンサーボードとは、旭川医科大学病院での悪性腫瘍:がんの症例に対して、各科の医師が集まって意見を出し合う大型カンファレンスのことで、当院では定期的に開催されております。

当部の上小倉先生は、平滑筋肉腫という珍しい悪性腫瘍の症例を診断し、その解説をしました。

平滑筋肉腫とは、人間の筋肉の一種である平滑筋細胞によく似た腫瘍細胞からなる悪性の腫瘍で、その特徴的な病理所見の一つに「両切りたばこ状核」というものがあります。

紙巻きたばこの種類の一つである両切りたばこと、平滑筋肉腫の細胞の核がそっくりな形をしているためそのように名付けられました。

日本の悪性軟部腫瘍の取り扱い規約にも記載されている、正式な病理用語です。

しかしながら、世界的に喫煙率が減っているこの御時世、両切りたばこ自体を知っている人はどれほどいらっしゃるのでしょうか。

ましてや医療に関連する概念をたばこで例えるというのも、現代のコンプライアンス的にはそぐわない気もします。

こういう問題提起という狼煙をあげると、火のないところに煙は立たないことを分かっていながら煙たがる人たちが出てきて、のらりくらりと煙幕を張られ、いつの間にかうやむやに煙に巻かれてしまいます。

ふかす訳はありませんが、こういう、人とは違う視点をバカみたいに追及できる人は、高いところにのぼるもの。

私はそう信じて、今は地道に研鑽に打ち込みます。

ただモクモクと。

当部の谷野先生と湯澤先生が共著したcase reportの「Diagnosis of Isocitrate Dehydrogenase-Mutant Astrocytoma in the Subcallosal Gyrus Using T2-Fluid-Attenuated Inversion Recovery Mismatch Sign and Quantitative Magnetic Resonance Relaxometry」がCureus (IF 1.2) にアクセプトされました。

当部の谷野先生と湯澤先生が共著したcase reportの「Diagnosis of Isocitrate Dehydrogenase-Mutant Astrocytoma in the Subcallosal Gyrus Using T2-Fluid-Attenuated Inversion Recovery Mismatch Sign and Quantitative Magnetic Resonance Relaxometry」がCureus (IF 1.2) にアクセプトされました。

翻訳ソフトや生成AIもたじたじの、なかなかに複雑なタイトルですね。

ざっくりと和訳すると、

「脳の一部分である梁下野というところにできた、脳腫瘍の1種である星細胞腫の中でも、

イソクエン酸デヒドロゲナーゼという細胞の中の1成分が、通常とは異なる性質を持っているものを、

MRI検査の撮影法の1つであるFLAIR法と、MRI検査撮影画像の情報を数値化して評価する方法、

その2つの方法を用いて診断した1例」です。

既にものすごい情報量です。

脳腫瘍の分野は特に、遺伝子や検査法など一般の方にはちょっと難しい言葉がたくさん登場します。

私は医師ですが、自分の精通していない領域の言葉の理解にはまだまだ時間がかかります。

そういう意味では、このホームページを読んで下さっている皆さんと近い視点だと思います。

今年も我々病理医のお仕事の一端をご紹介していけたらと思いますので、翻訳ソフトや生成AIもたじたじの人間味や親しみや温かみやわかりみを皆さんが感じていただけたら、私はうれしみを感じます。

 

当部の秋山直子臨床検査技師が、技師長に就任しました。

当部の秋山直子臨床検査技師が、技師長に就任しました。

主任、副技師長として、ずっと牽引してきて下さりましたが、この度、正式に技師長に任命されました。

当院は病理検体数も多く、技師さん達の協力なしでは病理診断は絶対に成り立ちません。

「師」という言葉には、「専門家」という意味以外にも「教え導く人」という意味もあります。

どうかこれからも、その素晴らしい技術を伝えるみんなの「師」して、末長く当部を支えて下さい。

改めて、おめでとうございます、秋山技師長。

当院消化器病理カンファレンスにて、当部の上小倉先生が症例提示を行いました。

当院消化器病理カンファレンスにて、当部の上小倉先生が症例提示を行いました。

消化器内科、消化器外科、病理診断科の3科合同で過去の症例について議論する場です。

今回取り上げられた症例は、「偽浸潤」が論点になりました。

文字通り「偽」の「浸潤」で、癌が深くまで進んでいるように見えて、実際は浅いところにある状態を指す言葉です。

癌の進んだ深さ次第で手術の方針も大きく変わるので、病理医は必ずこの偽浸潤という概念を知っておかねばなりません。

極端な話、しなくても良い過剰な治療を患者さんにしてしまうかもしれないからです。

医療は生きた人間を相手にしているので、必ずしも全てに同じ理屈が通ることはなく、例外はたくさん起こり得ます。

今回の偽浸潤も、言わば例外的な癌の評価です。

ですが、例外ばかりに目を奪われていたら、本筋を読むことはできません。

最近はSNSなどの普及で医師免許をもっている人の炎上がよく取り沙汰されますが、あれは例外です。

本当の医師は皆、医療人としての

筋は通しています。

当部の里村臨床検査技師が2024年度細胞検査士資格認定試験に合格しました。

当部の里村臨床検査技師が2024年度細胞検査士資格認定試験に合格しました。

個体の成分の少ない尿や胸水などの検体は、薄く延ばした状態で標本にし、細胞の状態を見て診断する細胞診という診断法を用います。

この細胞診は、施設にもよりますが医師だけでなく、資格を有した「細胞検査士」も直接的に診断に関わります。

里村さんは試験に合格し、その資格を手にすることができました。

里村さんが勤務時間外も自主的に勉強をして努力を怠らなかったのを、当部の誰もが見て知っていたので、この度の朗報は自分のことのように嬉しく思います。

本当におめでとうございます。

これからは診断レポートを通して、あなたの実力を、当院の誰もが見て知ることになると、心から思います。